20世紀は、急速にさまざまな音楽様式が生まれ衰退していった。その結果、音楽は多様化した。この音楽の急速な変化は、二つの世界大戦の影響による所が大きい。
印象派に対する反動として「表現主義」が誕生した。表現主義とは、第一次世界大戦の影響を受け「不安・恐怖・狂気などの深層心理を強調」した音楽であり、伝統的な調性を破壊した。これは後に無調音楽への道を切り開くことになる。代表的なオペラは、シェーンベルク作曲『月に憑かれたピエロ』やベルク作曲『ヴォツェック』など。
これらのオペラには「シュプレヒゲザング」と呼ばれる、台詞に近い歌唱技法が用いられている。
1921年、シェーンベルクが十二音階技法を考案した。1930年に『今日から明日まで』で初めてオペラに十二音階技法を採用した。十二音階技法による代表的なオペラは、弟子のベルクによる『ルル』(1937年初演)など。
第二次世界大戦後のイタリアにおいて、指揮者セラフィンとマリア・カラスらによってベルカントオペラが復興した。以後、ヴェリズモオペラとともにベルカントオペラも、多く上演されるようになる。
また、カラスはオペラに高度な演劇性を持ち込み、ドラマとしてのオペラ歌唱法を編み出した。以後はAC(アフターカラス)の時代と呼ばれるようになる。
第二次世界大戦後、前衛作曲家が頭角を現すようになる。前衛音楽家たちは伝統的なオペラに可能性を見出せず、「きわめて文学的」または「政治的なメッセージのある」オペラを求め「音楽劇」を作曲した。「音楽劇」は明確なストーリーを持たず、演奏とそれに伴う演劇的な所作に注目させることが特徴である。
前衛音楽は1960〜70年にピークを迎える。
1967年、前衛作曲家ブーレーズが「オペラは死んだ」「オペラ劇場を破壊せよ」と発言した。
1970〜80年には前衛音楽が退潮し、再び伝統的なオペラへ回帰した。代表的なオペラはリゲティ作曲『グラン・マカブル』など。
20世紀に入るとオペラの演目が固定化された。名作が繰り返し上演されるようになると、演出がより重視されるようになった。特に第二次世界大戦後には、「過去の名作を新しい視点で解釈し上演する」ことが多くなり、オペラは演出家の時代へ。
伝統的な演出から奇抜な演出まで、多様なオペラが上演されるようになった。
1980年代、ピリオド奏法による演奏がメジャーになる。⇒バロックオペラの復興
ピリオド奏法の影響を受け、オペラ歌手のフレージングおよびアーティキュレーションがより高度なものとなった。